第一幕:黒衣ならぬ白衣?大活躍
第一幕が終ると盛大な拍手とともに、ブーイングが一部の観客から出た。演出に向けられたブーイングであろうことは、カーテンコールでは、ジークフリートとミーメといった歌手達にはブーイングが無かったことからも想像に難くない。
人間が「舞台装置」として活躍し、「雰囲気」を表現し、登場人物の手助けをするという演出のコンセプトが、ジークフリート第一幕では、相当、賑やかに実施された。
まずは、舞台中央に、揺れる炎を表すべく、一群の人間が集まって(押し競饅頭?をして)いる。
各人がばらばらに動く様、そして、彼らを照らす炎のイメージの照明が、揺れる炎を表現する。
時に一人二人が、集団から外側に転がっていくのは、炎から出て行く火花を意味するのでしょう。
黒衣に似たところもありますが、自分の存在を隠さないし、衣装も白色が多いので、白衣と呼んでおきましょう。
白衣が、木の幹を持って舞台に出てきたと思ったら、幹を立てて寝そべって森の出来上がり。白衣が、緑の布から両手にヒマワリの花を持った手を上げれば花畑の出来上がり。
ジークフリートが、川に写った自分の顔のことを歌う際には、サランラップのようなビニールをジークフリートの前に伸ばして、川の出来上がり。
という具合。
という具合。
ミーメの部屋も壁を持った人間が行き来して、あっという間に出来上がったり、また、消えたりします。ミーメの部屋が消えると、舞台の後ろが自由に使える訳で、さすらい人とミーメの謎掛けの場面で、巨人族の話になれば、巨人族が人間プレスの立法形に載って、舞台後ろを一瞬、横切ったりします。
ジークリンデが、ジークフリートを産み落とす場面や、それを見て、ミーメがあたふたしている場面が、舞台後ろで演じられます。
この場面を演じるのは、歌手以外の人たちでした。つまり、手前の歌手のミーメとは別に、後方で瀕死のジークリンでの出産を目撃するミーメがいます。歌手のジークフリートが、舞台後ろのジークリンデに手を伸ばし、一瞬、母と子の手が触れたかに見えるシーンもありました。
この場面を演じるのは、歌手以外の人たちでした。つまり、手前の歌手のミーメとは別に、後方で瀕死のジークリンでの出産を目撃するミーメがいます。歌手のジークフリートが、舞台後ろのジークリンデに手を伸ばし、一瞬、母と子の手が触れたかに見えるシーンもありました。
ジークフリートがノートゥングを鍛える場面は、白衣達がでかい吹子?を担いで行進しながら登場し、全員総出でサポートというのは、人によっては、やり過ぎ感があるかもしれません。
私自身は、鬱々としてミーメと同居していたジークフリートが、今の環境から抜け出せるのという明るい気持ちになって行く場面なので、その賑やかさを単純に楽しみました。
白衣の活躍は、他にも盛りだくさん。ハンマーに合わせて、火花に見える紙吹雪?を振り掛けるという舞台効果という立場だけでなく、ノートゥングを鍛え終わったジークフリートに剣の柄を差し出すようにコラボレーションもします。
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ノートゥングを鍛えるジークフリートと
〔火花ならぬ〕紙吹雪を補給する〔黒衣ならぬ〕白衣の女性
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さすらい人(ヴォータン)は、ワルキューレに引き続き、力強く好印象でした。
熊は、以外にも?無理に四つん這いしないぬいぐるみであっさりしたもの。
第二幕:人間ドラゴン(の顔)は迫力満点
ドラゴンは、目と牙だけが、一般的と言うか、普通の舞台装置で使うような、ドラゴンのもの。
他の部分は何で出来ているかというと、そう、人間で出来ている。
ドラゴンの顔を形作る何人もの人間は、蠢きながら動いており、赤い照明で照らされている。
ドラゴンが退治された後、ファフナーは赤装束で登場。ファフナーの赤いコートをジークフリートが着ると、小鳥の声が聴こえるようになる。
小鳥役の歌手はバレリーナと思うくらいに、両手に扇子を持って、よく動いていました。
彼女以外に、鳥のおもちゃを釣り竿みたいなもので持っている女性とペアで行動しており、二人合わせて小鳥なのかもしれません。
第三幕:小鳥もサポート継続
人間が舞台装置になるというコンセプトから、エルダの登場も、エルダを隠していた人間の山が崩れるように広がって出現するという演出でした。この人間の山が自在に動いて、エルダを出現させたり、隠してしまったりというあたりは、決して、派手でも豪華でもないにも拘わらず、非常に効果的でインパクトがありました。
今回は少し単調かもと思ったりしたのは、バイロイトで受けた衝撃に慣れてしまったから?それとも、今回の二重唱の演出がやや軽めだったため?
この演出の基本コンセプトの基礎になる発想、人間はどんな精密な機械よりも精緻な動きができ、アーティスティックな舞台効果が可能という発想が成功していたと言えるのではないでしょうか。
最後は、舞台一面を覆うかのような赤い布が波打つように揺れるなか、ジークフリートが、小鳥(歌手の方)に靴を脱ぐのを手助けされながら、ブリュンヒルデと目出たくゴールイン。
そうです、小鳥はジークフリートがブリュンヒルデを見つけた後も、しっかり、ジークフリートをサポートします。
ラストの二重唱の演出は、ジークフリートの子供っぽさが強調されたしたもので、ユーモラスというか、やや、軽きに流れたような印象も感じました。
ジークフリートは、2010年のバイロイトでも同じ役を聴いたことがあるランス・ライアン。その時は、事前知識が全くなく、スリムな体躯と力強い歌唱に接して、衝撃にも似た印象を持った記憶があります。
今回は少し単調かもと思ったりしたのは、バイロイトで受けた衝撃に慣れてしまったから?それとも、今回の二重唱の演出がやや軽めだったため?
とは言え、全幕を通して細かい演技もこなしながら、最後まで全く危なげのない、高い水準の歌唱であったことは間違いないでしょう。
終演後:ノートゥング?展示中
二階のホワイエに、立派な台座に乗った剣を発見!ノートゥングだ!でもよく見ると、スペルがちょっと違うような?
この「Notung」ならぬ「Nothing」は、熱を持っているのが売り?らしく、係の人の説明を受けた人は、皆さん手をかざしていました。
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| 何と!Notungが! と思ったらNothing? |
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あれ?NotungでなくNothingでもなく、Nothung?
ロメオ・カステルッチさんは、演出家かつ美術家の方です。
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Wagner, Siegfried. Bayerische Staatsoper Ring-Zyklus B
Musikalische Leitung : Kent Nagano
Inszenierung : Andreas Kriegenburg
Bühne : Harald B. Thor
Kostüme : Andrea Schraad
Licht : Stefan Bolliger
Choreographie : Zenta Haerter
Dramaturgie : Marion Tiedtke
Olaf : A. Schmitt
Siegfried : Lance Ryan
Mime : Wolfgang Ablinger-Sperrhacke
Der Wanderer : Thomas J. Mayer
Alberich : Wolfgang Koch
Fafner : Rafal Siwek
Erda : Jill Grove
Brünnhilde : Catherine Naglestad
Stimme eines Waldvogels : Elena Tsallagova




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