7月11日 ワルキューレ バイエルン国立歌劇場
第一幕:フォークトのジークムント
ホールに入ると、昨日のラインの黄金とは異なり幕が降りており、指揮者のケント・ナガノが登場して拍手を受けて、幕が上がるという、通常のオペラのスタート。
ジークムントが何人かの敵と大立ち回り。これが、いつまで経っても終わらないので、どんな風に追跡を振り切って、フンディングの家にたどり着くのかと心配?していたら、舞台後方の半分が転換して、フンディングの家が現れた。
フンディングの家には、ジークリンデ以外に若い女性が何人もいる。
ラインの黄金では、登場人物ではない人間が「舞台装置」になり、時には、「雰囲気」を表現していたが、ワルキューレでは、さらに、登場人物の手助けをするようになる。
例えば、彼女たちは、ジークムントとジークリンデが酒の杯をやり取りする際には、舞台の左右に離れて立っている2人の間にいる何人かの女性が、手渡しリレーで杯を行き来させる。あるいは、フンディング帰宅後の食卓の準備は、彼女たちが、ジークリンンデと一緒にやったりする。
フンディングの家の真ん中には、大きな木があり、左右の奥の方には、左右両方とも、男性がベッドに横になっており、女性たちが汚れを落としているような作業を延々としている。
最初は怪我の手当かと思ったが、きれいに汚れを落としたあとに白い布でくるんでしまうので、死体処理なんだろう。
最初は怪我の手当かと思ったが、きれいに汚れを落としたあとに白い布でくるんでしまうので、死体処理なんだろう。
舞台の真ん中の木には、幾つか人形のようなものが掛かっているのだが、よくよく見ると、包帯に包まれた骸骨のようだ。フンディングの敵?の成れの果てなんだろうか。
おそらく、舞台奥で処理された死体が木に吊るされるのでは、、
おそらく、舞台奥で処理された死体が木に吊るされるのでは、、
今回、ミュンヘンにニーベルングの指環を見に行こうと決めた理由の一つが、ジークムントの配役にクラウス・フロリアン・フォークトの名前を見たことである。パルジファル、ローエングリンは、既に、CDやDVD、Blu-rayで全曲録音が出ているが、まだ、ワルキューレ全曲は無かったと思う。彼のジークムント、特に、「冬の嵐は去り」を生で聴きたい!と思い、チケット購入のボタンをクリックしてしまったのだ。
生で聴いた彼の「冬の嵐は去り」は、予想通り、丁寧な歌唱ぶりで、少し味付けが甘めに感じられなくもないが、聴きものであった。絶妙といっても良いだろう。
謎の女性たちは、手のひらが光る仕掛けになっており(電灯をもっているだけかもしれませんが、客席の私にはそう見えました)、ジークムントに気付かせるかのようにノートゥングを照らして見せたり、「冬の嵐は去り」の際には、ジークムントとジークリンデを囲むように並び2人を照らすという演出がされていました。
ノートゥングは木に刺さっていて、ジークムントがしっかり引き抜くという、素直な演出であったのは良かった。
歌手の歌唱は安定しており、また、ジークムントとジークリンデは、どちらかと言うと丸顔なところが、兄と妹という設定に違和感が無く、耳も目も満足できた。
昨日と同じく、登場人物の衣装も、デザインがすっきりしており、例えば、ジークムントはそのままトレッキングでも行けそうに見える点も良かった。
幕が終わっての拍手が音がほとんど消えてから始まったのは、昨日のラインの黄金と同じであったが、ワルキューレの第一幕のように、盛り上がって終わる場合でさえ拍手のフライングが無いことにも好感を持った。
第二幕:ヴォータン復活?
ヴォータンは歴史と格式を備えた大会社の会長のようだ。立派な重役室で、部下(服装からすると執事というイメージ)が持ち込む書類をつぎつぎサインして決裁していく。
ラインの黄金のラストで見せたような弱々しい印象は無く、組織を効率的に動かす大物のイメージ。
ラインの黄金のラストで見せたような弱々しい印象は無く、組織を効率的に動かす大物のイメージ。
今回も、舞台装置は人間というコンセプトから、前屈みに立った人間が、サインする書類を置くデスクになるし、ヴォータンが座ろうとすると、そこには、何人かの人間がソファーになって待ち構えているという具合だ。
フリッカが登場し、両手をあげて(久しぶりに会えて嬉しいとも言いたげに)ヴォータンに近づく。同じく両手をあげてヴォータンも彼女に近づくので、夫婦が仲良くハグするかと思いきや、そんな訳は無く、フリッカは最後にさっと身をかわして(一種のギャグ)、ト書き通りの口論が始まる。
フリッカが登場し、両手をあげて(久しぶりに会えて嬉しいとも言いたげに)ヴォータンに近づく。同じく両手をあげてヴォータンも彼女に近づくので、夫婦が仲良くハグするかと思いきや、そんな訳は無く、フリッカは最後にさっと身をかわして(一種のギャグ)、ト書き通りの口論が始まる。
ジークムントとジークリンデが逃げてきた荒野には、死体がごろごろころがって、その死体を漁る女性がいたので、一瞬、ワルキューレ達?と思ったが、単なる死体荒らしというのが正解でした。
第三幕:場内騒然の中、ワルキューレの騎行が始まる
幕開けに波乱があった。
幕が上がると、ワルキューレ達の前に女性ダンサーが立っており、彼女達がダンスを始めた。床を踏み鳴らし、髪を振り回し、気合いの叫びも入る野性的なダンス。
ワルキューレのイメージを具体化したとも思えるもので、なかなかの迫力であったが、これが、なかなか終わらない。一定のパターンがあって、それが何度も繰り返されていく。
かなり続いてから、観客席の一部から拍手が上がった。これは、純粋に満足という意思表示というよりは、もう結構、本来の音楽を始めて欲しいという気持ちも含まれていたと思う。
幕が上がると、ワルキューレ達の前に女性ダンサーが立っており、彼女達がダンスを始めた。床を踏み鳴らし、髪を振り回し、気合いの叫びも入る野性的なダンス。
ワルキューレのイメージを具体化したとも思えるもので、なかなかの迫力であったが、これが、なかなか終わらない。一定のパターンがあって、それが何度も繰り返されていく。
かなり続いてから、観客席の一部から拍手が上がった。これは、純粋に満足という意思表示というよりは、もう結構、本来の音楽を始めて欲しいという気持ちも含まれていたと思う。
この拍手に対してブーイングが始まる、すると、それに対抗するようにブラボーが始まり、拍手、ブーイング、ブラボーで場内が騒然となるなかで、ケント・ナガノがワルキューレの騎行を始めさせた。
冒頭の部分は、聞き取れないくらいであったが、すぐに、観客席の騒ぎも治まって、本来のオペラがスタートした。
観客席の私は、一体、どうなることかと気を揉んだり、ワルキューレの騎行の音楽が、なんとも騒然とした雰囲気に合っていると感じたりと、なかなか得難い?体験ができた。
実は、歌劇場が公開しているビデオでは、ダンスはあっさり終わり、スムーズにワルキューレの騎行に移行するのである。実演では、観客の反応を計算して、執拗にダンスを繰り返し、場内が騒然としてから、ワルキューレの騎行を始めたと思われますが、実際のところはどうなんでしょうか。
舞台にはポールが突き立てられていて、そのポールに死体が串刺しされている。ポールには、手綱?が付けられており、その手綱をワルキューレ達が手にして、床に叩き付けながら歌う。
空を翔る馬に乗り、手綱を打ち付けながら突進するイメージを出すための演出だろう。ワルキューレ達が何となくうろうろ歩き廻っているようにしか見えない演出よりは、迫力とスピード感を感じさせるもので、悪くないと思った。なお、ポールに死体が突き刺さっているのは、後で、片付けやすいという意図もあったであろう(後述)。
女性ダンサーはその後も舞台後ろで待機しており、舞台に突き立てられたポールを引き抜いて、串刺しされている死体ごと退場してしまう。
その後には、ヴォータンとブリュンヒルデだけが残り、舞台装置が殆ど無い、究極?のミニマリズムな演出で、二人のやり取りが続くという流れになる。この流れも、私には納得がいくものであった。
最後の場面で、ダンサー達が、炎を持って出てくるのは、今回の演出のコンセプト、登場人物以外の人間が舞台の進行を助ける、どおりである。
その後には、ヴォータンとブリュンヒルデだけが残り、舞台装置が殆ど無い、究極?のミニマリズムな演出で、二人のやり取りが続くという流れになる。この流れも、私には納得がいくものであった。
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| 左:ワルキューレ(ポールに死体が刺さっています) 右:ジークフリート(人間ドラゴン) |
最後の場面で、ダンサー達が、炎を持って出てくるのは、今回の演出のコンセプト、登場人物以外の人間が舞台の進行を助ける、どおりである。
終演後:サイン会
歌劇場には、マリエン広場にあるLudwig Beckというデパートのミュージック・ショップが入っているのだが、終演後、フォークトが、そこでソフトを購入した観客のためのサイン会を行った。
彼のCDはあらかた持っていたが、日本では目にしたことが無い、”Die Meistersinger”というドキュメントもののDVDが店頭にあったので購入し、そのカバーに彼のサインを貰うことができた。
http://www.sonymusic.de/Klaus-Florian-Vogt/Der-Meistersinger/P/2619600/B/88691926539
http://www.sonymusic.de/Klaus-Florian-Vogt/Der-Meistersinger/P/2619600/B/88691926539
歌劇場のスタッフ、ミュージック・ショップの店員さん、そして、フォークトさん自身、長い列をなしたファンの為に遅くまでご苦労様でした。
デパートのミュージック・ショップ というと、規模が小さく、特にクラシックについては、貧弱な品揃えを想像してしまいますが、Ludwig Beckはそれが当てはまりません。
後日、Ludwig Beckの5階にあるクラッシックの売り場を覗いて見ましたが、なかなか広々としており、特に、オペラのCDの品揃えは、相当に充実していました。
また、CDプレーヤが数台置いてあり、ソファに座って、自由に手に取って試聴できるCDが相当数用意されている(手に取れるので、ブックレットを見ながら、じっくり鑑賞が出来ます)など、設備も充実しています。
音楽ソフトに興味のあるクラシック愛好家の方には、ミュンヘンに行く機会があれば、是非、立ち寄ることをお勧めすします。
私は、買いそびれているうちに、入手困難となっていた、5枚組のAlain Planèsのドビュッシーのピアノ曲全集(harmonia mundi HMX 2908209)がセール価格(34ユーロ)で出ていたので思わず購入してしまった。自由に手に取って試聴できるCDの中に含まれていたので、CDの紙ケースが5枚すべて異なった洒落たデザインであることが判り、購買意欲が高まったこと購入に至った理由でもありました。
http://www.hmv.co.jp/artist_ドビュッシー(1862-1918)_000000000034577/item_ピアノ作品全集%E3%80%80プラネス(5CD)_3663138
http://www.hmv.co.jp/artist_ドビュッシー(1862-1918)_000000000034577/item_ピアノ作品全集%E3%80%80プラネス(5CD)_3663138
Wagner, Die Walküre. Bayerische Staatsoper Ring Zyklus B
Musikalische Leitung : Kent Nagano
Inszenierung : Andreas Kriegenburg
Bühne : Harald B. Thor
Kostüme : Andrea Schraad
Licht : Stefan Bolliger
Choreographie : Zenta Haerter
Siegmund : Klaus Florian Vogt
Hunding : Ain Anger
Wotan : Thomas J. Mayer
Sieglinde : Anja Kampe
Brünnhilde : Iréne Theorin
Fricka : Sophie Koch


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